金属および金属酸化物結晶材料の高温における機能性とその制御を格子欠陥の立場から研究し,高温熱力学,速度論を基礎とした機能性結晶材料の創製プロセス制御について研究しています。 特に,高温エネルギー変換に寄与する材料への応用を考えた研究を行っています。
河村研究室
金属の高温酸化に関する研究
金属材料は,高温の大気環境下などでは,表面が酸化され,徐々に金属としての部分が無くなっていきます。 当研究室では,金属材料が高温で酸化する過程(酸化機構)をより詳細に解明し(右図),耐酸化特性の観点から高温の大気環境下でより安定に使用できる耐熱合金の設計指針を提案しています。
ExInst02 雰囲気制御型高温酸化皮膜表面酸素ポテンシャル測定装置。 高温ガス環境下における金属材料表面に形成する酸化皮膜表面の酸素の状態を観測する装置。 酸化現象の本質に迫ります。
固体酸化物燃料電池に関する研究
燃料電池は,環境負荷の少ない発電システムとして注目されています。 当研究室では,燃料電池の中でも最も高温で作動する固体酸化物型燃料電池(SOFC) に関する研究を行っています(右図)。 SOFCにとって重要な構成部材である「合金インターコネクト」に特化し,使用環境における耐酸化特性を評価しています。
ExInst03 固体酸化物燃料電池の概略。 燃料電池の大容量化に欠かせない合金インターコネクト。 高温における耐酸化性,電気伝導性など様々な特性が要求されます。
溶融金属用酸素センサに関する研究
核燃料サイクルなどで発生する高レベル性放射性廃棄物の最終処分の負荷低減のため,放加速器駆動核変換システム(ADS)の研究開発がすすめられています。 ここで冷却剤として用いられる溶融金属と配管との間の反応を抑制するためには溶融金属に含まれる酸素の濃度を制御する必要があります。 この制御に必要な酸素センサを高信頼性という観点から開発しています。
上田研究室
新規オーステナイト系耐熱鋼の開発 -優れた高温強度と耐酸化特性の両立を目指して-

日本大震災以降,使用されている電力のほぼ9割が火力発電でまかなわれています。 一方,化石燃料を使用する火力発電は,他の発電手段に比べ,多くの二酸化炭素を排出します。 現状の電力供給を維持しつつ,二酸化炭素の排出を抑制して,低炭素社会を実現するためには,火力発電プラントの更なる高効率化が必要不可欠となります。

その鍵を握るのは「材料開発」であり,蒸気条件の高温・高圧化に耐えうる優れた耐熱金属材料の開発が重要になります。 当研究室が注目するのは,「使用環境における耐酸化特性」であり,優れた高温強度を発揮するように合金設計された新規耐熱金属材料を,使用環境で如何に長持ちさせるか?という点に着目した研究を行っています。

当研究室では,長年にわたり火力発電プラントのボイラー配管等に使用されている耐熱鋼の高温水蒸気酸化に関する研究を行ってきました。 耐熱鋼は,その表面に保護性酸化皮膜が形成するように合金設計されていますが,水蒸気を含む雰囲気では,保護性酸化皮膜が形成しにくくなることが知られています。 耐熱鋼をボイラーのような水蒸気含有雰囲気で安定に使用するためには,この現象のメカニズムを明らかにする必要があり,学問的にも工業的にもやり甲斐のある研究テーマになっています。

microscope02.jpg 新規オーステナイト系耐熱鋼に形成した酸化皮膜の一例: 800℃/336 hの水蒸気酸化試験で約5μmの酸化皮膜が形成した。 酸化皮膜は2相構造を呈しており,下側の層(色の濃い層)が保護性酸化皮膜。 このような構造を長時間維持することが求められる.
各種高温プロセスの最適化・効率化に関する研究

鉄鋼材料は現代社会において欠かせない材料の1つであり,その性能は日々向上しています。 鉄鋼生産の現場には様々な高温プロセスが存在し,鋼板は常に酸化する環境に置かれています。 各種高温プロセスにおいて鋼板表面に形成する酸化スケールを的確に制御することができれば,鋼板の品質が向上するとともに,生産性が上がります。

当研究室では,鋼の高温酸化に関する知見や経験を生かし,鉄鋼生産における熱延工程や溶融めっきプロセスにおける焼鈍工程に関して,その最適化や効率化を実現するための基礎研究を行っています。

東京工業大学 物質理工学院 材料系 金属F